アトランティス大陸伝説は、古代ギリシアの哲学者プラトン(前427年〜前347年)の、晩年の著作「ティマオス」と「クリティアス」の二冊が唯一無二のルーツである。この二冊をもとに何千冊にも及ぶアトレンティス物語が書かれる事となる。
「ティマオス」も「クリティアス」の比較的短い物語で、対話形式になっている。
アトランティス王国は、「ティマオス」 の中で、登場人物のひとり、クリティアスが、祖父のクリティアス(同名)から、先代(プラトンの時代のクリティアスから見ると曾祖父)が、当時親しかったギリシアの七賢者の一人ソロンから聞いた話として登場する。
ソロン(前640年〜前560年頃)が、当時エジプト新王国第26王朝の首都であったのサイスという町に前590年頃行って、老神官からアトランティスの物語について聞いたことを、約200年余を経てソクラテスが書き残したことになる。
ソロンの時代から9000年前に「ヘラクレスの柱」の前に、「リビア(アフリカのこと)とアジア」より大きなひとつの島があった。現在から見ると約12000年前のことである。古代ギリシア人にとって「ヘラクレスの柱」とは、ジブラルタル海峡の2つの山の事をさすので、大西洋に大きな島、つまりアトランティス大陸があったことになる。大西洋自体、英語でAtlantic Ocean(アトランティスの海)という。
アトランティス王国が強大な軍隊を率いて、古代アテネ王国を侵略をしようとしてアテネ軍に撃退されて、アテネ軍がアトランティス大陸に乗り込んだそのときに、突然襲った未曾有の天変地異で、大洪水と地震が起こりアトランティス大陸は、アテネ軍とともに暗い海の底に沈んでしまった、という。
「クリティアス」は、古くからアトランティス物語との別名があるくらい、詳しくアトランティス王国の様子を伝えている。アトランティスの首都には、三重の円形の堀を巡らしたアクロポリスの丘に海の神ポセイドンを祀った神殿、ポセイドンと結婚したクレイトオと2人の子どもである五組の双子を祀った神殿や、アトランティス王国全体を治めるポセイドンの長子であったアトラス王の子孫の宮殿があった。これらの建築物は、白、黒、赤など色とりどりの石材と炎のように燦然と輝くオレイカルコスという金属でつくられていた。 五組の双子達の長子アトラスは全体の王となり、アトランティス王国全体は、五組の双子にちなんで十の地域の分かれて、五組に双子の子孫が代々統治していた。
広大な平野には水路網が完備していて様々な果物や穀物の実りを水路が保障していた。まさに楽園であった。堕落してしまったのでゼウスの怒りにふれて…。ここで「クリティアス」は中断している。アトランティスの遺跡として、エーゲ海にうかぶサントリーニ島が有力視されているが、サントリーニ島の文明が火山の噴火で崩壊したのが紀元前1500年頃であり、プラトンの示す時代と違い、島の規模も違いすぎる。何よりもプラトンの示したのは「ヘラクレスの柱」より西の大西洋上にあった大陸であった。大西洋の一角を占めるカリブ海には、ビミニ・ロードとよばれる人工物やストン・サークルの遺跡などがハバマ諸島のビミニ島付近の海底にあり、アトランティスの遺跡である可能性が指摘されている。
エドガー・ケーシーによると、人類文明の揺籃の地の一つであったアトランティス大陸は、紀元前5万700年、紀元前2万8000年、紀元前1万600年と3回の破局を経て、海の底に沈んでしまったという。紀元前2万8000年の破局により大陸ば分断され島々に分かれ、最後の破局では数百年かけて島々が粉々にくだけ大西洋に沈んでしまったとのことである。あらかじめ崩壊が予想されていたので、エジプトやユカタン半島などに移住し、文明を移転した人々もいたという。
崩壊前のアトランティスは、現在のアメリカ合衆国の抱える課題とよく似ているという。また、現代よりも科学技術が発達していた。
そして、強大な軍事力をもち、誤用すれば大陸が吹っ飛び、気象変動を起こすような科学兵器を保有しており、深刻な人種差別も抱えていたという。また、国内には、物欲と支配欲のままに行動する「ベリアルの子ら」と呼ばれる人々と「神の掟の子ら」と呼ばれる人々との対立があったという。ゾロアスター教にいう光と闇の戦いが行われていた。
人は「人格の完成」をめざして、克服すべき課題を背負って、縁ある人達と共に、生まれ変わりを繰り返しているとのことである。アトランティス末期に生きた人々が大勢、現在アメリカ合衆国に生まれ変わり再生してきているという。持てる力を誤用してアトランティスの崩壊にもたらしてしまった過ちを克服することを学ぶためである。
参考図書
○「プラトンU クリティアス」田之頭安彦訳(「世界の名著」7 中央公論社 昭和44年)
○「アトランティスー失われた楽園伝説ー」金子史朗著 (胡桃書房 1982年)
○「エジプトからアトランティスへ」 E・E・ケーシー他2名著吉田恵美訳(たま出版 1993年
○「アトランティス」E・E・ケーシー著 林陽訳(中央アート社 1994年)
平成19年01月18日作成 第014話