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現生人類が生まれたのは、今から20万年前であると言われている。ヤスパースは、このことを人類革命と呼んでいる。
 今から約1万年前に農業が始まり、人類は、余剰生産を手に入れ文明への出発点に立った。同時に乾燥地帯では、牧畜が始まった。農業も牧畜も人類の手で食料を生産する画期的な事件であった。
 1万年前のこの変化は農業革命とも、食糧生産革命とも呼ばれる。

 次の人類の画期的事件は、食糧生産により余剰生産物が出来て、人々が都市に住むようになったことである。前3200年頃シュメール民族が、メソポタミアに都市を築いたのが最初といわれている。
 都市の中心には、それぞれ守護神が祭られ、守護神を中心に人々は生活した。神殿のお供え物を記録するために文字が発明されて、人々の経験が時間と空間を越えて直接伝承ではなしに共有されるようになった。この革命を都市革命と呼ばれている。

 4番目の画期的変化を、ドイツの哲学者ヤスパース(1883年~1969年)は、「枢軸の時代」とよんだ。
 
「この時代には、驚くべき事件が集中的に起こった。シナでは孔子と老子が生まれ、シナ哲学のあらゆる方向が発生し、墨子や荘子や列子や、そのほか無数の人びとが思索した、—インドではウパニシャットが発生し、仏陀が生まれ、懐疑論、唯物論、詭弁術や虚無主義に至るまでのあらゆる哲学的可能性が、シナと同様展開されたのである、—イランではゾロアスターが善と悪との闘争という挑戦的な世界像を説いた、—パレスチナでは、エリアから、イザヤおよびエレミアをへて、第二イザヤに至る予言者たちが出現した、—ギリシャでは、ホメロスや哲学者たち-パルメニデス、ヘラクレイトス、プラトン—更に悲劇詩人たちや、トゥキュディデスおよびアルキメデスが現われた。以上の名前によって輪廓が漠然とながら示されるいっさいが、シナ、インドおよび西洋において、どれもが相互に知り合うことなく、ほぼ同時的にこの数世紀間のうちに発生したのである。」
ヤスパース「歴史の起原と目標」重田訳『世界の大思想 40』,p.16-17



 伊東俊太郎はこの変化を「精神革命」と呼んでいる。人が人として生きるのに重要な倫理観や人生観の基礎が奇しくも同時期に世界中で同時発生的に生まれたのである。

 5番目の変化は、ヨーロッパのルネサンスより始まる科学革命の時代である。枢軸の時代の科学する心の復活とでも言えるこの変化は、実際は1760年代イギリスから始まる産業革命として結実する。

人類史区分(ヤスパースなどによる)
人類革命 20万年前 現代人と知能能力の同等である現生人類の誕生。
農業革命 1万年前 同時に牧畜もはじまり、余剰生産が生まれる。
都市革命 前3200年 神殿を中心に人々が集まり、都市生活が始まる。文字の発明、文明への出発。ユーラシア大陸の四大文明は、メソポタミア文明より始まる。他に古代アメリカ文明。
精神革命(「枢軸の時代」) 前500年±300年 ユーラシア大陸の各所で同時発生的に人類の精神生活の背骨となる思想家が現れる。
科学・産業革命 1600年・1760年 ヨーロッパのルネサンスによる科学する心の発達、イギリスに始まる工場生産の始まりつまり産業革命による物質的繁栄の時代。
神と霊の存在に目覚める時代 1998年 エドガー・ケーシーによると霊的なめざめの時代の始まり。

 この科学革命・産業革命の結果、爆発的な人口増加が起こり、今日の物質文明の時代を迎える。
 工場での大量生産は、言うまでもなく、延命的な医学の発達、農薬と肥料による食糧生産の飛躍的増加などである。この結果2000年前には世界の人口は2億であったと推計されているが、1804年に20億、2008年現在68億を超えている。この産業革命の結果、人類は古代の王侯貴族も想像できないような物質的な豊かさを獲得することとなったが一方失ったものも多かった。
 人類規模の環境破壊である。一部の有識者によるとこのまま、環境破壊や人口爆発が進行すると2020年には、人類は滅亡してしまうのではないかといわれている限界点に達しているとの観測がある。
 一説によるとこのことを回避するために、エイズであるとか鳥インフルエンザとかのウイルス菌を人工的に開発してばらまいて人口減少をもくろんだ。さらには、第三次世界大戦や核戦争までもくろんでいる一派がいるというのである。
 エドガー・ケーシー(1877年~1945年)によると、1998年は人類は物質的欲望に支配されてた時代から、神や霊の存在の目覚めの時代(いわば霊的目覚めの時代)の出発点となる画期的な分岐点になるという。21世紀を迎えた現代は、かつてない人類の繁栄の時代を迎えるための生みの苦しみの時代であるという。
 スピリチュアル・ブームと呼ばれる時代を迎えているのも事実であるし、環境保護に命をかけ、物の豊かさよりも精神的な豊かさを求める人々も増えつつある。

 ヤスパースによる人類史の区分を紹介したが、現生人類が発生して20万年といわれるが、発生したときと現代人と同じ手足と知能をもっていたとされる。その人類が19万年も食糧も生産できない狩猟・採集の時代であったのだろうか。12000年前にムー大陸やアトランティス大陸が存在し、高度な文明を築いていたという失われた文明説に真実があると考えている。そこでは両者の核戦争まで行われたのではないかといわれている。1万2000年前に核戦争と大天変地異によって世界中が原始時代にもどって、一からやり直したのが現代の文明であるとすれば、高度な文明を再建するのに1万年余期間となる。19万年人類が停滞していたと考えるより、人類にとってはこの考えの方が合理的ではないだろうか。さらに、人類の知能を考慮すれば、ムーとアトランティスの文明以前にも高度な文明があったかもしれない。

参考図書

○「都市と古代文明の成立」 伊東俊太郎編著(「人類文化史 第2巻」)講談社 昭和49年

平成20年09月20日作成  第055話