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高校生のためのおもしろ歴史教室>余話の部屋

13.コズミックカレンダー

  「その時(太初において)、無もなかりき、有もなかりき、空界もなかりき、そを蔽う天もなかりき。何者か活動せし、いずこに、誰の庇護の下に。深くして測るべからざる水は存在せりや。
 その時、死もなかりき、不死もなかりき。夜と昼との標識(日月星辰)もなかりき。かの唯一物(創造の根本原理)は、自力に風なく呼吸せり。これよりほか何物も存在せざりき。
 太初において、暗黒は暗黒に蔽われたりき。一切宇宙は光明なりき水波なりき。空虚に蔽われ発現しつつありしかの唯一物は、自熱の力によりて出生せり。
 最初の意欲はかの唯一物に現ぜり。こは意(思考力)の第一の種子なりき。聖賢らは熟慮して心を求め、有の親縁を無に発見せり。」(辻直四郎訳による)
  これは、インドのヒンズー教の古典「リグ・ヴェーダの讃歌」の一節であるが、宇宙創造の初めに唯一神ブラフマンが何もない闇の中から宇宙開闢を行ったことが、うたわれています。

 宇宙の始まりビッグバンから現在までを1年に換算したカレンダーをコズミックカレンダーといいます。
 表にすると次のようになります。宇宙の始まりから現代まで、年代については諸説あり、不明のことが多いので、日付については、資料によって変化します。
 
1月01日ビッグバン(137億年前)
  06日最初の星が輝く(135億年前)
  13日最初の銀河の誕生(132億3000年前)
8月31日 太陽と地球の誕生(46億年前)
9月01日 月の誕生(45億5000万年前)
  16日 海の誕生(40億年前)
  21日 最初の生命の誕生(38億年前)
10月07日 光合成生物の誕生[酸素の発生](32億年前)
  21日 コアが動き出し、地磁気バリアで地球が守られる(27億年前)
11月06日 細胞核を持つ生物の誕生(21億年前)
  30日 多細胞生物の誕生(12億年前)
12月12日 スノーボールアース[全球凍結](約7.5億年前〜6億年前)
  18日 魚類の出現(5億年前) オゾン層が形成され有害紫外線のカット(5億年前)
  20日 植物・節足動物の上陸(4億4000万年前)
  21日 昆虫類の出現(4億年前) 最初の木の出現[森の出現](3億8000万円前)
  22日 両生類の上陸(3億6000万年前)
  23日 爬虫類の誕生(3億1500万年前)
  24日 ゴキブリの出現(3億年前)
  25日 超大陸パンゲア・ペルム紀末の大絶滅[96%の種の絶滅](2億5000万年前) 恐竜の出現(2億3000万年前)
  26日 ほ乳類の誕生(2億年前)
  28日 始祖鳥の出現(1億5000万年前)
  30日 巨大隕石がユカタン半島に激突[恐竜の絶滅](6500万年前)
  31日19時31分26秒 猿人の出現(700万年前)
    23時52分19秒 ホモサピエンス[現生人類]の出現(20万年前)
    23時59分48秒 シュメール文明の発生(紀元前3000年)

 宇宙の歴史を1年に換算すると、8月31日に地球がようやく出現します。そして、9月16日に生命の母となる海が誕生します。9月21日に海底火山の噴出口付近で最初の生命が誕生しました。
 10月7日に光合成をおこなう生物が誕生しました。10月21日コアとマントルの動きが整い、地磁気により有害な太陽風から地球が守られるようになります。11月6日に膨大な遺伝子情報を組み込むことの出来る細胞核を持つ生物(真核生物)が誕生します。まだ、単細胞生物でした。
 11月30日なってやっと多細胞生物がようやく出現します。その結果、12月に入りようやく多彩な生物が出現してきます。
 光合成によって、酸素が発生し、酸素が成層圏にとどき、有害紫外線をカットするオゾン層が形成されたのが、12月18日のことでした。ようやく、生物は地上にあがることが出来るようになります。
 同日、魚類が出現しました。20日には植物、動物の上陸が始まります。22日には両生類の誕生しました。
 
 ティラノザウルス(6800万年前)
25日のペルム紀の大絶滅の後、恐竜が出現しました。   恐竜に圧迫されながらも26日には初めてのほ乳類が出現しました。  恐竜から発達した鳥類の初めである始祖鳥が28日に出現しました。  12月30日にあたる、6500万年前にユカタン半島に巨大隕石が激突し、生物種の70%以上が絶滅したといわれています。2億3000万年前から繁栄していた恐竜も絶滅しました。  そして、大晦日の午後7時31分26秒、最初の人類とされる猿人が出現します。  現生人類(新人)の出現は、午後11時52分19秒となります。
 四大文明の最初であるシュメール文明出現は、紀元前3000年頃、つまり午後11時59分48秒頃に当たります。

 生物の進化と、生物種の絶滅とは深い関係があります。巨大火山の噴火、酸素の極端な欠乏、凍結してスノーボールと化した地球。環境の激変による生物の絶滅事件、そのたび毎に、生物は、新たな進化を遂げてきました。
 あたかも見えざる意図があるごとく、今日の地球の様相に近づいてきました。
 地磁気も、大量絶滅期には消滅し、終わるとNとSが逆転するということも見られるとのことです。
 大規模な生物絶滅事件つまり、生物種が50%以上絶滅した事件を、ビッグファイブと呼んでいます。ビッグファイブの他にも、同等の大絶滅期がありました。現在判明している大絶滅事件は、7回有りました。
 例えば、現在の人類が70億いるとして、核戦争と環境破壊で1000万人に減少したとしても、人類の絶滅にはなりません。個体の減少に過ぎないのです。健全な環境が残れば、1000万人に減少したとしても回復するでしょう。
 如何に、生物種の絶滅50%が大きな事件であるかがわかるでしょう。
 最大の絶滅は2億5000万年前古生代ペルム紀末に起こりました。96%の種が絶滅するという悲劇をへて、恐竜の誕生など生物は新たな繁栄時代を迎えます。

☆ビッグファイブ(大規模な生物絶滅事件)
  5億5000万年前 原生代末のベンド紀末 エディアカラ生物群が滅びカンブリア紀の生物群があらわれる。ゴンドワナ大陸の分裂。 VC境界
☆  4億4000万年前 古生代オルドビス紀末 三葉虫の種の半減  
3億6500万年前 古生代デボン紀後期    
  2億6000万年前   古生代ベルム紀    GL境界 
2億5000万年前 古生代ペルム紀末 96%の生物種の絶滅。三葉虫の絶滅。
超大陸パンゲアの分裂による巨大噴火。火山ガスによる温暖化とメタンガスによる超高温化による海水の大循環ストップによる海の極端な酸素欠乏。
PT境界
☆   2億1000万年前 中生代三畳紀末    
6500万年前 中生代白亜紀末 恐竜の絶滅と共に70%の生物種が絶滅。ユカタン半島(カリブ海チチュルブ)に巨大隕石の落下による現在地球上に存在する核爆弾の総量の10万倍以上の猛烈な爆発。 KT境界  
  今後100年 現在 人類が引き起こしている生物圏の破壊によって、これから100年間の間に、地球上の半分の種が絶滅するのではないかと予想されている。  

宇宙の歴史の中で、コズミックカレンダーの尺度で見ると、

1月: 11.4億年
1日: 3753万年
1時間: 156.4万年
1分: 2.6065万年
1秒: 434.4年
0.1秒: 43.4年
   
 となります。

 産業革命が始まって200年、コズミックカレンダーの尺度でみると、0.5秒にも満たない期間の影響で、現在、大規模な生物絶滅事件がおきています。このままゆけば、今後100年で、生物種の50%は、絶滅するだろうといわれています。これは、過去の例と違い、人類がもたらした環境破壊によるものです。地磁気の減少も過去の生物絶滅事件同様起きています。46億年かかって進化してきた地球が、いま、人類によって破壊されようとしているのです。また、12月18日に漸く完成したオゾン層を今人類は破壊しようとしています。
 欧米のキリスト教文明とアジアアフリカのイスラム教文明のテロという形をとった壮絶な文明対立は、仮にイスラム教の出現が622年とすると対立が1385年続いていることになりますが、これさえも3秒間の出来事に過ぎなくなります。この対立で第3次世界大戦が起こり、核戦争になり、人類大絶滅になるとしたら何とおろかな事ではないでしょうか。
 全ては、宇宙の中のちっぽけな存在である人類であることに気づき、謙虚な人類になるとき解決するのではないでしょうか。
 
 ヒトの一生は、0.2秒にもなりません。瞬きの時間にも当たらないのです。宇宙の歴史にくらべると、瞬きの時間にも満たない、ヒトの一生の中で出会う人は、奇跡の確率で出会うことになります。地球の広さを考えると空間的な広がりも膨大なものです。同じ時間を共有し、同じ空間に存在するという奇跡を思うとき、いがみ合い、憎しみあう、何とおろかな事をしているんだろうと思います
 365日のカレンダーを作成し、巻物のように横につなぎ、それぞれの日に、宇宙の事件を書き込むと、目先の物質的繁栄のために環境を破壊し、同じ人類どおし争うことの愚かさをしみじみと実感します。 

参考図書

365日コズミックカレンダー (印刷して貼り合わせると365日の長い帯状のカレンダーになります。)
○「リグ・ヴェーダの讃歌」宇宙開闢の歌(「ヴェーダー アヴェースター」世界古典文学全集第3巻 訳者代表辻直四郎 筑摩書房 昭和42年)
○「NHKスペシャル 地球大進化 46億年・人類への旅」(1.地球の星 大衝突からの始まり 2 全球凍結 3.大海からの離脱 4.大量絶滅 5.大陸大分裂 6.ヒト 果てしなき冒険者) 編者 NHK「地球大進化プロジェクト」 2004年 日本放送協会

平成19年11月29日作成    第040話